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バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

バックパッカーの旅Ⅰ(東京~アテネ)

<白宮大旅社>

           ≪八月十五日≫      ―爾―



  全員揃った所で市内へ向かう。


 途中、台湾旅行が目的の学生も、一緒に台北へ行きたいという事で、

同行する事になった。


 総勢9名、競技大会に参加したほとんどがここに集結した。


 開会式をしてから、何日もたつというのに、又旅の日時をお互いに連

絡しあった訳でもないのに、こうして再会してしまう。


 こうした事は、ルートが決まっている以上、これからも起こり得るこ

とではある。



  同じ漢字文化、同じ人種とは言え、台湾はやはり異質なものを

感じる。


 集団で歩いているせいか、広東語を少し話せる会長がいるせいか、年

寄りが少し日本語を理解してくれるせいか、皆はじめての外国だと言うのに

何の不安も見せない。


    「戦後間もない頃の日本見たいやなー!」


 と、誰かがつぶやいた。


 大きなバックパックを背負った集団が、長い列を作って街を練り歩

く。


 これからどこへ行こうとしているのか、誰も知ろうとしない。


    「飯!食っていこうや!」


 と言う、会長の声で座ったのが、道路脇にある屋台。



  屋台の向こうでは、おばちゃんが汗をかきながら、料理と格闘

しているのが目に入った。


 このくそ暑いのに、油の浮いた煮えたぎる料理を、フーフー!言って

胃の中に流し込む。


 とうとう、全部食べる事は出来なかった。


 〆て、8元(エン)


 日本円にすると、70円程度の食事である。


 それでも、会長に言わせると「ちょっと高いなー!これからはもっと

安Kなるぞー!」と言う事らしい。


 それを聞いた仲間が、歓声を上げる。



  食事を済ませて、どこをどう歩いたのか、さっぱりわからな

い。


 とにかく、しばらく歩くとバス・ターミナルに来ていた。


 チケットを買うにも、バスに乗るにも、かなりの行列が出来ている。


 よく見ると、台北行きのバスは、間隔をおかず来ているようで心配な

さそうではある。


     (基隆~台北行きバス、12.5元)


 順序欲並んだ列が、次々とバスの中に吸い込まれていく。


 これだけの列ができていると言うのに、日本のように乗客を押し込ん

だりはしない。


 車内の立ち席が半分ほど埋まると、バスは発車してしまうのだ。



  我々を乗せたバスは、風をいっぱいにはらませて走る。


 仲間の半分は座れたようだ。


 右の窓からは、下の方に川が見えてくる。


 その向こうには、鉄道が並走していて、満員の乗客を乗せた列車が走

っている。


 よく見ると、連結部分にも人が溢れている。


 バスの中で、時差があることにやっと気がついた。


 時計を一時間戻して、只今十時二十分。


 バスも快調に走る。



  台北に着く頃には、喉がカラカラに渇いていた。


    「暑いなー!コーラが飲みてー!」


    「もうすぐだ!」



  終点の台北でバスを降りると、会長が泊まっているホテルへ、

取り合えず行く事にした。


 このときも、キョロキョロして歩いていただけで、どこをどう通って

来たのか、まるで興味は起きなかった。



                     *



  中国語で高級ホテルのことを”大飯店(タア・ファン・テ

ン)”か”飯店”と言う。


 我々が来たのは、安宿で”旅館(リークワン)”または”旅社(リー

シェ)”と言うらしい。


 名前を、”白宮大旅社”と言う。


 その下に、大きな文字で”WHITE HOUSE HOTEL”と書かれてあった。



  街には、昔日本で”バタバタ”と呼ばれていた三輪車や日本製

の車がやたらと目についた。


 ホテルのTVもナショナルであり、画面ではソニーのコマーシャル・

フィルムが流されている。


 ホテルの中は暗く、廊下と階段だけがやけに目に付いた。


 日本語の少しわかるおばさんと、広東語が少しわかる会長が、我々の

宿泊を確保すべく契約の話し合いをしている。



  一部屋二人の割り当てで、全員やっと落ち着く事が出来た。


 部屋の中には、二つのシングル・ベッドと簡単な洋服ダンスに小さな

テーブル、そして天井には、昔の日本の映画館で廻っていた、大きな扇風機

がゆっくりと音を 立てながら廻っている。


 もちろんこれも日本製。
 なんとも古ぼけた、きたない部屋であ

る。


 しかし、この部屋がこれからの旅を通じてましな方だと知らされるの

に、時間はかからなかった。



  落ち着いた所で、台湾上陸の無事を祝ってビールで乾杯。


 乾ききった喉を潤す、ビールのうまい事とと言っら・・・・・・・。


    「うめ―!」


 食事の後で飲んだ、デザートの生ジュースもうまかった。


 メロン・バナナ・ピーチなどを混ぜて作った、ドロンとしたジュース

で、氷で冷やされた日本にはない生ジュースの味を堪能する事が出来た。



      ≪昼食メニュー:台湾ビール・ギョーザ(五個)・牛
   肉を載せた麺類・ジュース・・・・・・・・・これで、70元。≫


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